~めっけもん通信~

宮古市田老地区 平成17年に宮古市や新里村と合併した宮古市田老地区(旧田老町)は、漁業が盛んで、特に真崎ワカメなどの海産物が有名です。
この田老地区は「津波太郎(田老)」という異名がつけられるほど、古くから津波被害が多い地域でもあり、昭和三陸津波の後に建設された日本一の防潮堤は『万里の長城』とも称され世界的にも注目されていました。しかし、東日本大震災で発生した大津波により一部が倒壊し、多くの被害が出てしまいました。

今回ご紹介する、しあわせ乳業の佐藤 力さんも、田老の町中にあった倉庫を流出し、被害にあわれたお一人です。

しあわせ乳業 代表取締役 佐藤 力さん
 新潟県出身の佐藤 力さんは結婚を機に宮古市へ転居。田老地区にあった牧場で仕事を始めました。
それまで牧場で働いた経験がなかったという佐藤さんですが、働いていくうちに仕事の楽しさに魅了されていきました。
「牛乳を飲んでたくさんの人に『幸せ』になって欲しい…」と5年前にしあわせ乳業をスタートし、現在は牧場も運営しています。なぜ、佐藤さんは田老地区で酪農を続けているのでしょうか。町の魅力、そして農業の魅力についてお聞きしました。

──5年ほど前から田老地区でしあわせ乳業を経営していらっしゃるんですよね。 牧場はいつ開牧されたのですか?

佐藤 昨年(2012年)10月に開牧しました。4頭の牛を自然放牧で買い始めていたのですが、今では6頭に増えました。今度また小牛が1頭増える予定です。今年中に12、3匹まで牛を増やしたいと考えています。それから、有機酪農を目指しています。餌も自社で作りたいと考えています。有機酪農をすることができれば、有機牛乳を販売する事が出来ます。これは東北初のことなんですよ。それを使った加工品も作る事ができます。

── 夢が広がりますね! しあわせ乳業さんの商品を教えてください。

佐藤 関東にある自社の店舗でソフトクリームなどを販売しています。宮古では田老の道の駅で牛乳を販売しています。まだ少ないですが、地元の企業さんと協力してアイスを作ったり、宮古市内の居酒屋でアイスを使ってもらっています。今後は、田老にある工場の所でソフトクリームやアイスを販売していきたいと考えています。

── 地元の企業さんたちとはどのような商品を作っているんですか?

佐藤 山田町のびはんさんとは宮古の伝承食でもある青大豆と、米粉と砂糖と少量の塩でできた昔からのおやつ「すっとぎ」をアイスにした『すっとぎアイス』。五篤丸水産(ごとくまるすいさん)さん(五篤丸水産は、山田町で被災した五つの会社、川石水産・尾半加工センター・おみなや・木村商店・佐野魚店が手を取り合って立ち上げた企業)とは『山田せんべいソフト』などの商品を作りました。「山田せんべい」とは米粉、胡麻、砂糖、塩、醤油で作った生のせんべいです。他にも現在開発中の商品があります。

  

── 地元のならではの色々なアイスができるのは楽しみですね! たくさんの事に挑戦していますよね。それだけ佐藤さんにとって酪農は魅力的なんですね。

佐藤
酪農にはたくさんの魅力がありますよ。だからここまで続けてこれたと思います。たぶん、完全自然放牧をしているから面白い、し自分にとって魅力的なんだと思うんですよ。知れば知るほど面白いのが酪農です。誰もやっていないことをするのが本当に楽しいんです。自分の夢に向かって進んでいけるんです。それから、海のある漁業の盛んな沿岸で酪農をするのが面白いんです。ヨーロッパでは沿岸で育った牛の牛乳で作ったチーズはおいしい、と言われているそうです。沿岸特有の潮風とやませが牛たちに良い影響を与えてくれると思っています。沿岸酪農、とでもいいましょうか。私はそれを目指しています。

── 酪農というと内陸というイメージもありますが、沿岸だからこその良い影響がありそうですね。

佐藤
酪農は森林とも深い関わりがあります。林間放牧というのを聞いた事がないでしょうか?
森林に牛を放牧し、林地の下草を牛に食べさせ、粗飼料軽減・省力化を図る放牧の事をいうのですが、それをする事によって、森林の維持にも効果があるんです。普通森林では森を荒廃させないために下草を刈らなければならないのですが、牛たちを放牧する事でその作業が軽減されるんです。また、牛達の糞はたい肥にもなりますから森が元気になるんですよ。
牛の糞はバイオマスのエコエネルギーとしても注目されていますし、酪農ってとってもエコなんです。それから関東の方で頑張っている酪農家さんの中には、役所のシュレッダーで出た紙をもらって来て、藁として使っている人もいます。役所で出た紙は綺麗だし定期的に敷き藁を変えることで牛も綺麗になる。それに役所の方もシュレッダーから出た紙はただのゴミとして処理するのにかなりのお金がかかっていたそうですから、それを酪農に使うことでお金もかからず、お互い節約になっているという話も聞きました。

──聞けば聞くほど魅力がいっぱいですね。そんな魅力ある酪農を宮古市田老地区で続ける理由はなんですか?

佐藤 さきほど言った沿岸酪農を目指しているというのもありますが、何より私が好きなのは朝日ですね。田老から見える朝日は本当に綺麗です。夜には星空もよく見えます。田老の人たちに言うと「いつも通り」のその光景がとても素晴らしい景色なんですよ。

──それでは最後の質問です。佐藤さんにとって夢はなんですか?

佐藤『朝日が昇る牧場計画』です。あまり使われていない海側の山間部を利用して、太平洋を眺める事が出来る牧場を作りたいと考えています。日本一綺麗な田老の朝日と大地と海の恵みを体中に浴びた牛達がいる光景は、見た人たちに癒しを与える事が出来るんじゃないかと思います。そこで牧場の魅力を感じてもらって、地元の人も気軽に立ち寄れる牧場を作る事が私の夢です。


夢を持ち酪農をしながら頑張る佐藤さん 牛も可愛くて、沢山の人にここに立ち寄って楽しんでもらいたい!そんな思いにさせてくれる素敵な場所でした。佐藤さんありがとうございました。